七つ風の戦士 最終話

暖炉の火がパチパチと心地よい音を立てる、穏やかな夜。 ふかふかのベッドの中から、緑色の肌をした子供――ミエが、目を輝かせてベッドサイドの祖母に食いついた。

「おばあちゃん、その後どうなったの!?」

優しく微笑むシワだらけの老婆は、ゆっくりと、昔を懐かしむように物語の続きを紡ぎ始めた。

「……満身創痍の戦士タケルが、たった一人で巨大なバケモノの前に立ちはだかった時。奇跡が起こったの。タケルの絶対に諦めない『嵐』の力に呼応するように、倒れていた仲間たちの底から、最後の力が沸き上がったのよ」

老婆の目は、遠い過去の眩しい光を見つめているようだった。 「炎、月、鋼、知、氷、そして縁……。7人の戦士の残された全ての命の力が一つになって、天を衝く一撃となり、ついに偽りの神ソラを打ち倒したの」

「わあ……っ!」 ミエは興奮して布団を握りしめ、そして少し首を傾げて重ねて問うた。 「じゃあ、その後、ハイ(地の民)とロー(天の民)の関係はどうなったの?」

「それからはね……」 老婆は、ベッドの毛布を優しく掛け直しながら答える。 「メーテルという戦士が架け橋となって、地の民と天の民は仲直りをしたの。もう二度と、愚かな争いはしないって誓ってね」

「メーテルはその後、初代の世界大統領となって、二つの種族が共に生きていける様々な仕組みを作ったわ。そして彼女自身が、天の民と地の民が愛し合えることの証明として、世界中を平和の象徴として回ったのよ。……数十年が経ち、本当に平和な世界が完成したのを見届けてから、彼女は別の若い人にその座を譲って引退したの。その平和は、今もこうして続いているわ」

その言葉を聞いて、ミエは自分の緑色の手の甲を不思議そうに見つめた。 「そっかぁ。僕の友達も、天と地のハーフばっかりだけど……昔は、すごく珍しかったんだね」

「そうね」 老婆は、孫のその緑色の小さな手を、愛おしそうに両手で包み込んだ。 「こんな当たり前の平和な世界ができるまでは……本当に、色々なことがあったみたいね」

「今日もお話ありがとう、おばあちゃん!」 ミエは満足そうに微笑み、ふと何かを思い出したように言った。 「そういえば……おばあちゃんも、物語のお姫様と同じ『メーテル』って名前なんだね。すごい偶然! ……むにゃ……おやすみ、おばあちゃん……」

安心したように、ミエはすぐに規則正しい寝息を立て始めた。 老婆は、かつて世界を救ったその手で、愛する孫の頭を優しく撫でた。 「……おやすみ、ミエ」


静かに子供部屋のドアを閉め、老婆――メーテルは、自分の部屋へと戻った。

彼女の私室には、世界大統領としての華々しい功績を示すものは何一つ置かれていない。 あるのは、壁に掛けられた古びた木の弓と、戦いの歴史を記した手記。そして、かつて共に死線を潜り抜けた、愛しい仲間たちの遺品だけだった。

メーテルは、机の上に飾られた二つの写真立ての前に座る。

一つは、青空の下で笑い合う、7人の若き戦士たちの色褪せた集合写真。 ぶっきらぼうに笑う義手の男、風のような笑顔の青年、凛とした黒髪の女性、真顔の鋼の少女、ギャルの勝気なハッカー、そして、豪快に笑う筋肉質の女海賊。 彼らと共に駆け抜けた過酷で愛おしい10年間の旅が、メーテルの脳裏に鮮やかに蘇る。

そしてもう一つの写真立てには、彼女がこの生涯でただ一人、心から愛した人の姿が写っていた。 天の民と地の民を繋ぐ「縁」の紋章を背負い、誰よりもちやほやされたかった不器用な少女は、戦いの果てに、本当の愛と、本当の平和を手に入れたのだ。

メーテルは、シワの刻まれた指先で、愛する仲間たちの写真をそっと撫でた。

「……みんな。明日は、ミエを連れてお墓参りに行くわね」

静かな夜風が窓を揺らし、部屋に置かれたかつての武器たちが、彼女の言葉に応えるように微かに鳴った。 星降る夜空の下、天と地が交わった新しい世界は、今日も穏やかな眠りについていた。


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