普通の女子高生だけど、霊能力があるから悪霊なんて怖くない サイドA

私は、円城寺灯(えんじょうじ・あかり)。 肩下まで伸びた黒髪がトレードマークの、高校二年生、15歳。周りからはよく「キレイ系の美人」なんて言われたりもするけれど、中身は至って普通の女子高生……のはずだ。

「気をつけてね、灯。今日もあなたが無事でありますように」 「うん、行ってきます!」

玄関を出る前、ママは今日も真剣な顔で私の無事を祈ってくれた。 私の『灯』という名前は、「希望がともるように」という願いを込めてつけてくれたらしい。その愛情をたっぷり受けて、私は今日も元気に学校へと向かう。

通学路を歩いていると、前方に少しだけ背が高くなった見慣れた後ろ姿を見つけた。幼馴染の男友達だ。 「おはよー!」 声をかけると、彼はチラッとこちらを振り返り、小さく手を挙げてから、またスタスタと先を歩いていってしまった。 中学校までは毎日一緒に登校していたのに、同じ高校に入ってからはこうして一緒に歩いてくれなくなったのだ。年頃の男の子だし、女の子と一緒に登校するのが照れくさいのかな? そういうところ、ちょっと可愛いかもなんて思いながら、私は彼の背中を追いかけた。

――でもね。 こんな普通に見える私には、たったひとつだけ「普通じゃない」秘密がある。

私には、霊能力があるのだ。

「あ、灯ちゃんおはよ! ねぇねぇ、今日も占いやって!」 「俺も俺も! 昨日お前の言った通りになったんだよ!」

教室に入って鞄を置く暇もなく、クラスの子たちがわっと私の席に群がってくる。 こういう占いみたいなスピリチュアルなことって、女子だけが好きなものだと思っていたんだけど……気がつけば男子まで目を輝かせて順番待ちをしている。私の占い、もしかして的確すぎて凄すぎるのかな? みんなの期待に応えるのは満更でもないけれど、朝から大忙しだ。

やがてお昼休みのチャイムが鳴る。 さすがにこのまま教室にいたら、お弁当を食べる時間まで占いを頼まれて大変なことになってしまう。私はそっと教室を抜け出し、学校で誰も来ない、私だけの秘密の場所――旧校舎の裏庭へと向かった。

「ふぅ……やっと一息つける」 誰もいない静かな空間で、お弁当箱を開く。みんなの悩みを聞くのも嫌いじゃないけど、お昼ぐらいは静かに落ち着きたいわよね。

しっかりエネルギーをチャージして迎えた午後の授業。科目は数学だ。 黒板の前に立つ先生は、今日は妙にイライラしていて、ちょっとしたことで怒鳴り声を上げている。 普通の人には「今日の先生、機嫌悪いな」としかわからないだろう。でも、私にははっきりと視えていた。

先生の肩に、どす黒いモヤのような悪霊がべったりと取り憑いているのを。

(……このままじゃ、授業どころじゃないわね)

私はこっそりブレザーのポケットから、いつものお手製の『札』を取り出した。スッと立ち上がり、先生に向けて札を掲げる。

「急々如律令……悪霊退散っ!!」

私の口から紡がれた呪文とともに、見えない力が教室を駆け抜けた。札から放たれた霊力が先生の肩を直撃し、どす黒いモヤが悲鳴を上げて霧散していく。

「おぉぉーっ!!」 「さすが灯!!」

クラスメイトたちから、割れんばかりの歓声と拍手が沸き起こった。 憑き物が落ちてスッキリとした顔になった先生は、さっきまでの怒りが嘘のようにキョトンとした後、チョークを握り直した。

「……コホン。よし、それじゃあ授業を続けるぞ」 何事もなかったかのように冷静な、いつもの先生に戻っている。一件落着だ。

そして帰りのホームルームが終わる時間。 「灯! この後みんなで遊びに行かない?」 何人かの子に誘われたけれど、私は申し訳なさそうに手を合わせた。

「ごめんね、今日は早く帰らなきゃいけないの!」 さっきの除霊で消費した霊力を蓄えるためには、ゆっくり休まなくちゃいけない。それに、私が帰るのが遅くなったら、家でママがすごく心配してしまう。

足早に家路につき、玄関のドアを開ける。 「ただいまー!」 「おかえりなさい、灯! ああ、今日も無事でよかったわ……!」 ママは心底ホッとしたような顔で、私を温かく迎え入れてくれた。

夕食を食べてお風呂に入り、まだ少し早いけれど、もうベッドに入る時間。 霊力を使うとやっぱり少し疲れるみたい。布団に入ると、すぐにまぶたが重くなってきた。

「明日も……きっと、いい日だといいな」

窓から差し込む優しい月の光を浴びながら、私は静かに目を閉じた。


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