神鳴くんはクールを装う 7話

夏が過ぎ、秋が来た。修学旅行のシーズンだ。

俺たちの学校の今年の行き先は、北陸の古都、石川県・金沢だった。

「響~! 新幹線の中でトランプやろうよ! ねぇねぇ!」

「うるせぇ。寝る」

俺はいつものように、隣で騒ぐ葵を突き放し、窓の外の景色を眺めた。もちろん、内心は修学旅行に浮かれている。京都や奈良ではなく、金沢という渋いチョイスも、クールな俺には似合っている。

茜は、別の車両のクラスだが、連絡を取り合い、「金沢で合流しましょうね!」と意気込んでいた。

金沢に到着し、兼六園や近江町市場といった名所を巡る中、俺たちは前田藩の墓地へと立ち寄った。鬱蒼とした杉林の中に、苔むした古い墓石が並ぶ、静かで厳粛な場所だ。

金沢の歴史を感じる場所で、周囲には修学旅行の生徒はほとんどいない。不穏な空気が漂い始めたのは、その時だった。

「…ここか」

俺は、ピカリスの震えを感じ、すぐに警戒態勢に入った。墓地の影から、全身を黒いローブで覆い隠した、痩せ型の男が現れた。

男は、俺と目が合うと、静かに片手を差し出してきた。

「レッツダンス」

俺は、一瞬の戸惑いもなく、その手に応じた。

「上等だ」

周囲の景色が、一瞬でバトル・フィールドへと転換される。

「俺の能力は、死を操る『デスサイズ』だ。この墓地がお前の墓場となる」

ローブの男は、低い声で名乗りを上げた。

俺が名乗りを上げる間もなく、男は両手を広げた。その瞬間、周囲の古い墓石の下から、土を掻き分け、ぼろぼろの死体が這い上がってきた。数十体のゾンビが、俺たちを取り囲む。

(くそっ、墓場の死体を操る能力か…! 相性最悪だ!)

ゾンビたちは、見た目こそ腐敗しているが、その動きは鈍くない。むしろ、死体とは思えないほどの力強い攻撃を仕掛けてきた。

俺は、ゾンビの大群から逃げ回りながら、ローブの男との距離を取ろうとする。

「効かないぞ、デスサイズ! お前の雷では、動かない肉体は止められない!」

デスサイズは、静かに俺を嘲笑する。確かに、心臓も神経もない死体相手に、雷撃は有効打にならない。

(どうする…魔雷光は効かない。魔眼で幻覚を見せても、こいつらは視覚に頼って動いてねぇ…)

その時、俺の頭にひらめきが走った。それは、魔神雷(マシンライ)の、新たな可能性だ。

(そうだ…! 人の神経は、微弱な電気信号で動いている。なら、死体が動いているのも、デスサイズの能力による電気信号か、それに近い信号で動いているはずだ!)

俺は、一瞬逃げ惑うのをやめ、立ち止まった。

「魔神雷(マシンライ)!」

俺は、全身の電力を、周囲のゾンビたちへと放出した。俺の電力は、デスサイズの支配を無視し、その制御信号を上書きするように、ゾンビの運動神経を支配した。

ゾンビたちは、一斉に動きを止め、その次の瞬間、俺の意のままに動き出した。

「なっ…!? 馬鹿な! 支配を上書きしただと!?」

デスサイズは、初めて動揺の色を見せた。数十体のゾンビが、今度はデスサイズ自身を囲み、攻撃態勢に入る。

「悪く思うなよ、デスサイズ。お前の敗因は、俺の能力を知らなかったことだ」

俺は、自分の支配下に入ったゾンビたちに、一斉にデスサイズを攻撃させた。肉塊の壁に押しつぶされ、デスサイズはあっけなく戦闘不能となる。

「ふん。相性の問題とはいえ、雑魚が」

俺は、ローブの男が倒れるのを見て、いつものクールな装いで吐き捨てた。

しかし、俺の内心は、とてつもない慢心に包まれていた。

(海を支配するネプチューンも、死体を操るデスサイズも…。能力の相性が、全て俺に味方している! 俺の雷の能力は、物質、エネルギー、そして生命活動の全てを支配できる…。これは、王者の能力なんじゃないか?)

俺は、自分の能力の無限の可能性を感じ、冷酷なまでに自信に満ち溢れていた。この調子なら、妖精の王様になるのも夢ではない。

俺は、墓地で倒れているデスサイズに目もくれず、バトル・フィールドの解除を待った。

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