東立株式会社――。その名を聞いて、日本の産業界で知らない者はいない。戦後の焼け野原から立ち上がり、昭和の高度経済成長期に一気に世界へと羽ばたいた産業用機械の巨艦。今やそのシェアは世界の40%を超え、まさに「メイド・イン・ジャパン」の象徴であった。

創立者の意向は一風変わっていた。彼は「地方なくして日本なし」の精神を重んじ、成長の過程で利益を東京や大阪といった大都市に集中させるのではなく、全国津々浦々の地域経済を潤すためにと、日本全都道府県に支社を置くことを義務付けた。その意向は現在も守られ、東立は他社にはない異質な企業体質を保っていた。

舞台は東北地方のとある県庁所在地にある東立の支店。創始者の地方発展の夢を体現した場所であるはずが、現実は違った。日本国内での新規製造業の立ち上げなど夢のまた夢。支店の仕事は、長年の既存取引先からの継続案件の注文処理がメインだ。それすらも、東京の本社や大阪、名古屋といった主要都市で大筋の話が固まり、この支店に流れてくるのは、ただの注文書の処理だけ。まるで産業機械の巨大な歯車の、動きの止まった端っこ、油の切れた末端のような場所であった。

支店長はハマ・ソウスケ、50代前半の男性である。元は本社で部長職にあったが、役員が手塩にかけて囲っていた愛人に手を出し、その咎でこの静かな地方に文字通り「飛ばされて」きた。ハマは元々、仕事への強烈な熱意など持ち合わせていなかった。持前の人当たりの良さ、相手を立てるのが上手い「人たらし」な性格で、いつの間にか出世の階段を偶然登ってきただけ。現在は何の責任感も持たず、ただただ定年までの残りの数年を、この穏やかな地で静かに生き延びればいいと日々をこなしていた。そんな彼を部下たちは、裏で陰気に「チャーリー」と呼んで嘲笑っていた。彼の周りには、いつも静かでどこか頼りない女性たちが集まってくる。彼にとって、彼女たちは「言うことを聞く」という意味で、本社から遠いこの地での唯一の心の慰みであった。

ある日、静寂を破る大波が、まるで荒れた冬の日本海から押し寄せるように、本社から支店に届けられた。この地方の製造業における最大手企業が、次世代の主力機械導入をめぐる大型受注コンペを開催するというのだ。東立本社としても、長らく手をこまねいていたこの大手を何としてもモノにしたい。

ハマは、重い腰を上げ、誰にこの案件を振るべきかと考えた。だが、支店のほとんどの社員は、既存のルーティンワーク以外の責任を負うことを嫌がり、ハマの指示にも従順ではない。このような大型案件は、東京との頻繁なやり取りや、煩雑な書類作成、そして何より失敗した時の責任という重荷を伴うため、彼らはしり込みするばかりだった。

そんな環境下にあって、一部、ハマを心から慕ってくれる、あるいは利用しようと縋り付いてくるメンバーがいた。

一人目は、営業職のアマツカ・マヤ、41歳女性。若い頃は目立つほどの美人で、彼女が幼い頃から少しグズグズしたり、困ったポーズをとると、周りの男性が勝手に動いてフォローをしてくれるという人生を送ってきた。それが彼女にとって「当たり前」の生き方となり、自分で努力したり、真剣に考える必要がなかった。しかし、30歳前後からその「助け」は劇的に減少し始めた。若さと美貌という彼女の唯一の資本が目減りした結果である。ずっとそう生きてきた彼女は、今さらどう生きていけばいいのか、どう仕事をすればいいのかわからなかった。今でも昔のようにグズグズしていると、お客様からのクレームが限界に達し、周りの常識的な社員がしぶしぶフォローしてくれる。彼女にできることは、唯一「上の者」に縋り付くことだった。具体的に仕事をするわけではないが、彼女はハマの言うことには全て従順に従うポーズをとり、彼を「神輿」として担ぎ上げ続けた。

二人目は、同じく営業職のハナゾノ・ミヤ、44歳女性。中卒の彼女は、根は頑張り屋ではあったが、壊滅的に頭が悪かった。元々は派遣社員であったが、たまたま国で派遣制度の改革があり、その「おこぼれ」として滑り込みで正社員職を得て、この大手企業に入り込むことができた。頑張り屋でポジティブ、良く言えば猪突猛進な彼女は、この偶然を全て自分の能力が優れていたための結果だと信じて疑わなかった。彼女には、よくある低学歴の人間が妄想する「高学歴の人間は頭でっかちで、現場を知らない。中卒の叩き上げこそが本当の仕事ができる」という強い思い込みがあった。実際はまったく仕事ができず、頭も悪く、取り柄もないのだが、自分を仕事のできるキャリアウーマンだと固く信じ込み、毎日「私はできる」という独り言を繰り返していた。

最後は、技術職のサイオン・サヤ、43歳女性。彼女は若い頃に海外留学の経験があり、彼女が入社試験を受ける頃、東立はちょうど「グローバル化」を謳っており、英語力が重要視されていた時代だったため、無事に入社することができた。しかし、彼女は学業成績はともかく、精神面に非常に問題を抱えていた。一言でいえば癇窶持ち。自分が気に入らないことがあれば、オフィスでも叫びちらし、プロジェクトの失敗は全て他人の責任、うまくいったことは全て自分の手柄とする。厳しい現実からは全て逃げ出し、華やかな仕事以外は全て行いたくない。いわゆる社会性が完全に終わっていたのだ。

この三人は、その体たらくぶりと、ハマ・ソウスケという「チャーリー」に縋り付く姿から、社内では陰で「チャーリーズ・ブラックエンジェル」と揶揄されていた。

大型案件に尻込みする他の社員たちを見渡したハマは、自分の定年までの安寧と、自分の言うことを聞く人間への微かな恩情から、今回の大型案件を、この「チャーリーズ・ブラックエンジェル」の三人に任せることを決めた。

「君たちには、私を信じてついてきてくれた恩がある。今回は、この東立の未来を託したい」

ハマの言葉は、三人の女性の耳には、心からの信頼と、自分たちへの期待として響いた。マヤは「これでまたしばらくは安泰」と、ミヤは「私のような叩き上げの能力がついに認められた」と、サヤは「私が持つグローバルな視点と才能が、本社にも認められた」と、それぞれに都合の良い妄想を抱いた。

こうして、「チャーリーズ・ブラックエンジェル」は、この地方最大手からの大型受注という「栄光の舞台」へと送り出されることとなった。

しかし、この大型案件、実は東立株式会社には微塵のチャンスもない出来レースであった。

クライアント側は、既に既存の取引先の決定で水面下で話が固まっていたのだが、社内コンプライアンスのルール上、「ちゃんとコンペティション(競争入札)の上で決定した」という建前が必要なだけであったのだ。

東立は、ただ「客寄せパンダ」として呼ばれたに過ぎなかった。

そんな中、自分たちが東立の命運を握る選ばれし者だと信じ切った「チャーリーズ・ブラックエンジェル」の三人は、滑稽なほどに真剣に、そして、ひどくズレた方向へと仕事を進め始める。

大型受注コンペの締切まで、あと二週間。東北支店の空気は、本来なら張り詰めるべきなのだが、奇妙な弛緩状態にあった。中心にいるのは、ハマ・ソウスケ支店長と、彼に命運を託された「チャーリーズ・ブラックエンジェル」の三人である。

東京本社からは、一応、技術部と営業企画部の若手社員がそれぞれ一名、サポートのために派遣されてきていた。彼らはこの東北支店の異様な雰囲気に戸惑いながらも、東立の看板を守るために、提案書の作成に奔走していた。

天塚マヤ:グズグズの美学
営業職のアマツカ・マヤは、提案書の肝となる価格設定と納期調整のセクションを担当していた。重要なのは、競合他社を意識した緻密な戦略と、クライアントの要望を最大限に汲んだ現実的な数字である。

しかし、マヤはデスクに座り、化粧直しをしながら、資料を広げるばかりで手を動かさない。価格の決定根拠、納期のリードタイムといった必須項目は、全て白紙のままだった。

「あら、ごめんなさいね。私、こういう数字の細かいところって、どうも苦手で…」

彼女は、本社から来た技術サポートのタナカ(20代後半、エリートコース)に、上目遣いで、困ったような、それでいて少し甘えるような目線を送った。

タナカは困惑しつつも、すぐにマヤの意図を察した。「あの、天塚さん、ここは根拠がないと本部で突き返されます。せめて概算だけでも……」

「ええ、分かっているのよ。でもね、田中さん。私、センスは人一倍あるって言われるんだけど、こういうのって、頭の硬い人に任せるのが一番だと思うの。あなた、本社でバリバリやってたんでしょう?私みたいにグズグズしてちゃダメよね」

マヤは「グズグズ」という言葉を強調し、自分の無能さをまるで「才能」の裏返しであるかのように演じた。彼女の真意は、「私のような美人で繊細な女性は、細かい計算なんて向いてない。あなたが有能なら、私のためにこの空欄を埋めてくれるはず」というものだった。

タナカはため息を押し殺した。これが、「自分で動けないから、周りが動く」というマヤの戦術だった。結局、タナカは自ら本社のデータベースにアクセスし、マヤが空欄にした部分の価格戦略や納期調整のシミュレーションを徹夜で代行する羽目になった。

「本当に助かったわ、田中さん。あなたって、やっぱりいい男ね」

マヤはタナカの肩に軽く触れ、まるで自分の功績であるかのように微笑んだ。タナカは心の中で舌打ちした。(チャーリーに気に入られてるから、逆らえない。本当に、ブラックエンジェルだ)。

花園ミヤ:熱意と妄想の暴走
一方、営業の花園ミヤは、提案書の冒頭と結論、そしてプレゼン資料の作成に、異常な熱意を注いでいた。

彼女は、提案書をパラパラとめくりながら、本社から派遣された営業企画のイトウ(30代前半、真面目一徹)に熱弁をふるった。

「伊藤さん、ねえ、伊藤さん!この提案、やっぱり魂が足りないわ!」

「魂、ですか……。あの、花園さん、技術的な優位性やコストダウンの実現性をデータで示しているんですが……」

「違う!高学歴の人間の提案は、いつも頭でっかちなのよ!クライアントが本当に欲しいのは、情熱と現場の汗なの!ねえ、見て!」

ミヤがパソコンの画面を伊藤に向けた。彼女が作成したコンペ資料の表紙には、東立のロゴと並んで、とんでもないスローガンが特大ゴシック体で躍っていた。

『高学歴の常識を打ち破る!中卒叩き上げの私たちだからこそできる、魂の現場主義!』

伊藤は絶句した。「花園さん、これは……企業間の公式な提案書で、学歴を出すのはまずいのでは?それに、提案内容に全く関係が……」

「関係あるわよ!私は叩き上げよ!あなたたち大卒エリートには分からない、泥臭い本当の仕事があるの!クライアントは、その熱意に打たれるのよ!ねえ、ソウスケ支店長だって、私の熱意を買ってこの大役に任せてくれたんだから!これは私の提案なの!」

ミヤは、学歴コンプレックスと、自意識過剰による自己肯定感が混ざり合った、根拠のない自信に満ち溢れていた。伊藤は、この提案書がクライアントの役員会議で嘲笑の対象になる光景を想像し、胃液が逆流するのを感じた。

結局、ミヤはそのスローガンを撤回せず、むしろプレゼンの冒頭で熱く語ることを決めた。彼女の頭の中では、クライアントがその熱意に感動し、万雷の拍手の中で彼女を讃える妄想が広がっていた。

西園サヤ:癇窶と責任転嫁の女王
技術職のサイオン・サヤは、提案の核となる新技術の導入部分を担当していた。彼女が留学経験で得た「グローバル」な視点は、確かに最先端の動向を掴む上で役立つはずだった。

しかし、彼女の「仕事」は、主に本社から派遣された技術担当のタナカを罵倒することに費やされた。

「タナカ!この部品選定、何を考えてるの!こんなドメスティックなものを使ったら、将来性が無いじゃない!」

「サイオンさん、これはクライアントの既存設備との互換性を考慮した、最もコストパフォーマンスの良い選択肢です。提案書にはそれを明記して……」

サヤは、タナカが持っていた提案書の束を、文字通り床に叩きつけた。

「うるさい!日本のガラパゴス技術に染まりきった頭の硬い人間が!私のグローバルな視点から言わせれば、これは赤点のゴミよ!なぜ、私が海外で学んだ最新のAI統合システムを提案しないの!?」

「AIシステムは、導入コストが跳ね上がり、予算を三倍オーバーします。それではコンペの意味が……」

「コスト?コストばかり気にするから日本はダメなのよ!失敗は全てタナカ、あなたのアタマの硬さのせいよ!私の才能と知識を活かせない環境が悪い!私はこんな華のない、地味な作業はしたくないわ!」

サヤは、そう叫びちらし、会議室を飛び出した。彼女は、提案書の作成という地味で緻密な作業から逃げ出し、自分の気に入った華やかで抽象的な概念(グローバル、AI、最新技術)をタナカに押し付け、実現不可能な要求だけを突きつけるのだった。

タナカは、床に散らばった提案書を拾い集めながら、疲弊しきっていた。このプロジェクトが成功すれば「サヤさんのグローバルな視点のおかげ」、失敗すれば「タナカの技術力のなさ」になるのは明白だった。

チャーリーの静かなる笑い
ハマ・ソウスケ支店長は、支店長の個室で、コーヒーをすすりながら、三人の「天使」たちの動向を静かに把握していた。

(マヤは相変わらず人にやらせて、ミヤは妄想を暴走させ、サヤは癇窶で現場を混乱させている。ああ、滑稽だ)

彼は、窓の外の灰色の空を眺めながら、心の中で笑った。

「まあ、いい。どうせ負けるコンペだ。どうでもいい女たちに、どうでもいい仕事をさせて、責任という毒を吸わせておけばいい。どうせ、奴らは責任など感じない。責任を負うのは、私でも、本社から来た若造でもない。勝手に失敗し、勝手に反省すればいい。私の定年までの平和が保たれれば、それでいい」

彼の脳裏には、彼らの滑稽な努力の先に待つ「敗北」の二文字と、その敗北の責任が自分に一切及ばないという、深い安堵しかなかった。

「チャーリーズ・ブラックエンジェル」は、偽りの舞台の上で、今日も懸命に、そしてひどく滑稽に踊り続ける。彼女たちの目の前にあるのは栄光ではなく、自分たちの人生の現実という名の巨大な鏡でしかなかった。

そして、運命のコンペの日。

結果は、ハマの予想通り、東立の大敗であった。クライアント側の評価は「現実的でない価格設定(マヤの空欄の結果、タナカが強気に設定せざるを得なかった)」「意味不明なスローガンと熱意の暴走(ミヤのプレゼン)」「既存の設備との互換性を無視した非現実的な技術提案(サヤの要求)」という、散々なものであった。

コンペから三日後。東立東北支店は、いつもの静寂を取り戻していた。本社から派遣された若手二人は、疲労困憊の顔でそそくさと東京へ帰っていった。

その日の夜、ハマ・ソウスケ支店長は、マヤ、ミヤ、サヤの三人を連れて、支店から徒歩圏内の古びた居酒屋「大漁」を訪れた。

四人が座った座敷席は、漁師町の香りがする、安くて騒がしい場所だった。

「まあ、今日は残念会だ。気に病むことはない。私も社長も、君たちの情熱はちゃんと分かっている」

ハマは愛想の良い笑顔で、熱燗の徳利を傾けた。部下たちは彼を「チャーリー」と呼ぶが、外ではやはり「支店長」であり、彼の持つ「人たらし」の魅力は健在だった。

「支店長……」アマツカ・マヤは、半分泣きそうな顔で、ぐい呑みを差し出した。「私、本当に頑張ったのに……。私みたいな繊細な人間には、このショック、堪えますわ……」

「よく頑張ったよ、マヤさん。君の心遣いは、私には痛いほど伝わっている。だがね、今回の敗因は、東京の本社の奴らの頭の固さだ」

ハマは、敗北の責任を「東京」という見えない敵に擦り付けた。これこそ、彼の得意技だった。

その言葉を聞き、花園ミヤは勢いよく立ち上がった。

「そうよ、支店長のおっしゃる通りよ!結局、高学歴の常識が、私たちの情熱を殺したのよ!あのプレゼンで、私は魂を込めたのに!私の叩き上げの力を、奴らは理解できなかったのよ!」

ミヤは、コンペの敗北が、自分の能力の限界ではなく、学歴社会の闇によるものだと確信していた。彼女は、負けたことで、さらに自分の妄想を強化した。

「この社会は、現場の人間の本当の力を見ようとしない!絶対、見返してやるんだから!支店長!次の案件、私にやらせてください!」

「ハハハ。もちろん、ミヤさん。君の熱意は東立の宝だよ」ハマは、適当に相槌を打った。

その隣で、サイオン・サヤは、熱燗を呷り、憤怒の表情で机を叩いた。

「うるさい!熱意だ、情熱だなんて!結局、タナカの技術的な準備不足よ!あいつ、私の言ったグローバルな視点を全く理解しようとしなかった!全て、あいつのせいよ!私に、華のない、地味な仕事ばかり押し付けた、あいつが悪い!」

サヤは、コンペの敗北の責任を、本社から来た技術サポートの若手に全て転嫁した。

「支店長、私はね、もっとグローバルで、華やかな仕事がしたいの!こんな東北のドメスティックな仕事なんて、私には似合わないわ!」

「分かっているよ、サヤさん。君の才能は、この日本に留まる器じゃない。もう少し待ってくれ。私の方で手を回す」

ハマは、三人の「天使」たちの一方的な自己弁護、責任転嫁、そして自己肯定感の爆発を、静かに受け止めていた。彼らは、敗北を、誰も自分のせいだと認めなかった。マヤは「繊細すぎる自分のせい」、ミヤは「高学歴社会のせい」、サヤは「他人と環境のせい」にした。

彼らは、自分の人生の現実、つまり「仕事ができない」という事実を、この居酒屋の薄暗い光の中でも直視することはなかった。

ハマは、熱燗を飲み干し、静かに笑った。

(ああ、これでいい。誰も責任を感じない。誰も私を責めない。どうせ負けるコンペだったのだ。どうでもいい女たちが、どうでもいい敗北を、どうでもいい理由で自己完結させる。私は何もしていない。何も責任を負わない)

彼の心は、定年までの穏やかな日々に満たされ、安堵していた。

「さあ、みんな、飲め飲め!明日はまた、東立の平和な日常が待っているんだから!」

ハマの掛け声と共に、三人の「チャーリーズ・ブラックエンジェル」は、自分たちが負けたコンペを「不当な敗北」と定義し直し、次の「栄光の舞台」へ向けて、酒を煽り続けた。

居酒屋「大漁」の喧騒の中に、敗北を一切顧みない、滑稽で幸福な四人の笑い声が響き渡った。この東北の静かな支店は、これからも変わらず、創始者の夢とは裏腹に、惰性という名の大きな波に揺られ続けるのだろう。